こんなにお節介をかけてくれるのは、きっと山瀬先生くらいだと思う。



『そろそろインフルエンザ流行ってくるから、それを越えてから退院させたいと思ってるけど。』



大きく目を開いて先生を見る。



『退院!できるの!?』



静かに。というジェスチャーをする。



ここは病院だった、昨日のテンションじゃいけないんだ。



しかも熱があるのに、こんなに元気なのは不思議だ。



『白血病はかなり数値がよくなった。よくがんばったね。』



ほっと胸を撫で下ろす。



『長い入院になったから、昨日みたいに、少しずつ外泊を増やして大丈夫そうなら、退院の準備しようね。』


『うん、でもお母さんオーストラリアいっちゃったよ。』



『先生の家に来ればいいよ。』



え、本気なんだ。



お母さんが冗談っぽく言ってたのは。



『嫌なら別にいいけど。』



『嫌じゃないけど、先生は本当にいいの?』



『うちの親に無理やり引き受けさせられたんじゃないの?』



『何言ってんの、先生が自分の意思以外でゆうかをうちに迎え入れると思う?』



自信なさげに首を振った。



『今まで言ったことに嘘はない。ゆうかのこと支えていきたいと思ったよ。
まあ本音を言うともう少し色気は欲しいけどね。』



意地悪そうに言う。



『私だって色気ある!』



『自分であるって言ってる人に、色気はありません。』



ひどい。そんな直接言わなくてもいいのに。



『ところで、どこでインフル拾ってきたの。』



『インフル?私インフルエンザだった?』



山瀬先生はうなずく。



だからマスクをしていたんだ。



『トイレ以外外出禁止、むやみに騒がないわかった?』



『わかったよ、大人しくするから。』