「……やっぱり丞爾くんの方がいい?」
「え?」
「今からでも空港に押し掛けたら、きっと丞爾くんなら、貴方を受け入れてくれると思うわ。貴方もお姫様になるのよ」

 行ってほしくはないけどね、と力なく笑った。
そんな悲しそうな傷ついた顔、してほしくない。

「行かないよ。玉の輿なんか、興味ない」
「……麻琴ちゃん」

「私は、業平に今日中に婚姻届けを書いてもらえたらそれでいいよ」

 おばさんとおじさんが保証人のところに名前を書いてある婚姻届けを目の前に突き出した。
業平の顔が真っ青になる。

「だめよ、プロポーズをちゃんとさせて。夜景の見える高級レストランで指輪を差し出しながら、プロポーズさせて!」

「結婚に夢を見てるんじゃない。結婚するのはこの私だ! そんなロマンチックなシチュエーションは似合わないだろう!」

業平の手に、判子を持たせようと押し倒す。
きゃーって言いながらまるで生娘みたいになぜか胸を隠す姿はめちゃくちゃ可愛い。