「キスしたことについては、何か聞かないんですか」

私の最低最悪の持論を展開してあげようと思っていたのに、彼はなぜか頭を突っ伏しクラクションを大きく鳴らした。


「どうせからかっただけです。気にしないようにしてます」
「汚してみたいなって思ったんだよ」

ハンドルに突っ伏した頭を撫でると、振り払われた。


「貴方は男が苦手とか怖いとか言うくせに、俺にそんなことしていいんですか」
「だめなの?」
「好きな人の前で、理性を押さえている男心が分かっていない」
「分からないかも」

理性がなくて、襲ってきた実父ならいるし。
我慢している男の人の気持ちが分からない。

「私ね、ジョージさんみたいに綺麗な心じゃないし、計算高いし、恋愛音痴だし、性格ゴミみたいだし」

自分で言っていて、良いところが見つからなくて首を傾げる。
あ、賞味期限切れてても三日ぐらいは気にせず食べられる、かな。

「そんな私と体が繋がったら、繋がった部分からジョージさん、汚れていくかなって思ったんだ」
「……それって」

顔をあげたジョージさんは、一人で百面相した後、少し唇を尖らせた。