「着きましたよ」

キスされて、状況が分からないときょとんとした目でジョージさんは首を傾げていた。
しばらくクエスチョンマークを目の中に浮かばせていたけれど、信号が青になり発進すると『では家まで送りますね』と何事もなかったように話しかけてきた。

そしてそのまま隣の県行の高速道路に乗ったので悲鳴を上げてしまった。

『ちょっと! 次のインターでUターンして』
『あ、そうですね、はい!』

返事だけして、なぜかトラックはUターンしたものの高速から降りたあと、沢山トラックが停まっている広い駐車場のあるコンビニに止まった。

『あの……今、キスしました?』
『うん。うるせえな、綺麗だなって思って』
『あ、そうですか』
 魂が抜けた表情で、彼は今度は何度もレバーを引いたりアクセルやブレーキを踏んで焦りだした。
『どうしたの』
『いや、あの、エンジンがかからなくて』
『……鍵回してないんじゃないかな』

どうやら表情には出していないけど、とても動揺していたらしい。

着きましたよって、業平の家に連れてこられたのは、三時間経ってからだ。

釣り場から業平の家まで一時間もかからないのに、だ。