化粧をしていない業平は、恥ずかしいのか大きなサングラスで顔をかくしている。

けど、黒のロングのジャケットとどこで買ったのか、バイソンガラのジーンズ。
 スタイルがいいから着こなしてるけど、モデルみたいな服装に悪目立ちしている。

「うわあ、虹村社長、格好いいですね。モデルみたい」
「いやあん。褒めちゃう? 褒めちゃうの? 嬉しい」

るんるんと嬉しそうな業平に、当然私はチョップした。

「あんたね、あんなに襲われてるような電話しておいて、なんで普通に話してるの」
「丞爾くんは更衣室で謝ってくれたのよ。それに私のためだったからね」
 ついてきて、と言われ、私は二人の一歩後ろを歩く。
筋肉マッチョの長身と、モデル体型の細身のイケメン。

いい絵になる。二人のせいで貴重な焼肉の時間を奪われたのは腹立たしいけど、業平の幸せそうな顔を後ろから見ていたら、何も言えなくなる。

二人が幸せなら、私はもうそれでいいんだよね。

「ほら、着いたわよ」

私たちは、大理石の長い廊下をひたすら歩きエレベーターに乗り込み、クラシックホテル、グランツェのスイートルームにやってきた。

「なんか……めっちゃ高級そうなホテルっすけど」
「けど、業平の家見てるから、驚かないよね」