「お蕎麦、どうしようかな」

友達と言う友達がいない。
ここは地元だから、地元の同級生は私の父親がうんこ野郎だったのを知ってるし、私の凶暴性も知っている。

ので、同級生の友人は全くできないし、私もいらなかった。
だからお蕎麦が沢山あっても、業平がいないなら誰にあげていいのかわからないのだ。

「社長、今日の夕飯なんですか?」

「お昼ご飯食べながら夜ご飯って、満腹だから想像できなくなるよねー」

社長はしわしわの手で頬を包み込むと、考え出した。

「さっぱりしていて、あっさりしていて、美味しいものが食べたい」

「おおお。私、それを業平に言われたらプロレス技をかけてしまいそうだ」

具体的な名前は言わないくせに注文は多いなんて、この野郎って気持ちになる。

「逆に麻琴ちゃんは一人の時は何を食べてるの?」
「え……死なない程度の最低限度のカロリーを摂取できるならなんでも」

社長が沈黙する。これは、まずかったか。

「今日、婚約者くんがいないなら、焼き肉に行きましょう」
「え、社長のおごりでですか!」
「もちろんです。事務の子、皆呼びましょう!」
「やったーっ」

貧乏自慢は引かれるから言わないようにしていたけど、ぽろっとこぼしてしまってラッキーだった。

良いことが続くといいな。

業平が上手くいきますように。