「ぜんぜん迷惑なんかじゃないよ。でも、少し時間くれる?」

「あ、ああ」

「健太のことは好きだけど、その、今まで彼氏とか、そんなふうに考えたことなかったから。真剣に考えてみる」

 健太は、ぼそっと、「わかった」と一言残して後ろを向くと

 わたしを置いて、走って帰ってしまった。

 どうしよう。どうすればいいんだろう。

「ただいまー」

 リビングの扉を開けると、お母さんが洗濯物を畳んでいた。

「遅かったね。お帰り。あれ、どうしたの。顔が真っ赤。熱でも出た?」

 お母さんがそばに来て、心配そうにおでこに手を当てる。

「大丈夫だよ。寒かったからじゃない?」

 わたしはその手を振り払って、自室に飛び込んだ。

 まともに話ができる精神状態じゃない。