「八神くん、私……別れたくない」

服を掴んで必死にそう訴えた。


「あぁ。別れねぇから安心しろ」



八神くんはそう言ってくれるけど……どうしたら……。



八神くんは私の腕を引き、抱き寄せた。

ギュッと抱きしめてくれる八神くんが……愛しい。

離れたくない。



「やだよ……」

「大丈夫。認めてもらうから。……長く俺といたらまた怒られそうだな」


……。


「今日はもう帰れ。また明日話そう」

「うん……」


名残惜しくて、ゆっくり八神くんから離れた。


「また明日ね……」

「あぁ」


本当は帰りたくない。


でも……八神くん、別れないっていってくれたから……。



八神くんは、私が家の中に入るまでずっと見送ってくれた。





バタンッと家のドアを閉め、リビングの前を通るとお父さんが来た。



奥ではお母さんが夕飯の支度をしている。