患者さんに寄り添える医者で在りたい。
とは思うけれど、どう言う医者を目指しているのか自分でも分からなかった。
心臓外科での研修が終わった今でもやはり憧れは原田先生だから、いつかはあの人のようになりたい。

検査にでも向かっていたのだろう、看護師さんに車椅子を押されていた原田さんを見かけた。
久しぶりに話がしたい。そう思った。

「原田さん、久しぶりだね」
「野田先生。お久しぶりです」

仕事が終わり夕方、部屋を訪ねると彼女はベッドに背を預け景色を見ていた。

「あれ、なんか元気ない?」
「ううん、今日はリハビリ頑張りすぎちゃって、ちょっと休憩中」

「そっか。休むなら帰るよ」
「ううん大丈夫。何か話してよ」

そう言われ今の研修の話だったりテレビ番組の話だったり、しばらく彼女との会話を楽しんでいた。
けれど途中から段々と彼女の様子が変わっていった。目を瞑り下を向き深呼吸を繰り返していた。