「今、何考えてる?」
「何って…別に何も」
「そっか」

僕からの問いに静かにそう答えた。

「結衣は、怖くない?」
「何が?」

「正直言うと、僕はすっごく怖い。昨夜結衣の荷物まとめてると思ったんだ。パジャマにタオルに羽織る物。歯ブラシやコップ、シャンプーにリンス。カバンが大きくなればなるほど、部屋から結衣のものが消えていく。病気の人を治したい、結衣を救いたいそう思って医者やってるのに、結衣が帰って来なかったらどうしようって怖くなった」

「………」

「僕がこんなに怖いのに結衣が怖くないはずないよね」

そこまで話すとしばらくの沈黙が流れた。