「指で触るとね分かるんだ。あぁーココに傷があるんだって。そんな自分の姿を鏡で見るのが怖い…それに…お医者さんじゃない時のゆうちゃんに見られるのもイヤ」

彼はいつの間にか力いっぱい握っていた手をゆっくり解きながら言った。

「何時間もかかった手術を乗り越えた。術後の発熱で気分も悪くて、もちろん傷も痛んだ。慣れないICUで孤独にも耐えた。看護師さんが体の向きを変える度に痛いはずなのに弱音を吐かなかった。全部この傷のせいだ。その傷を付けたのは間違いなく僕。僕がこの手で切った。でも、後悔はしてない」

「……後悔なんて…」

「事前に断りもなく手術を承諾したのは悪かったと思ってる。でもそれも後悔してない。そのせいで痛くて不自由で辛い入院生活を送る事を知っていたのに。そんな手術を勝手に決めた僕を嫌いになった?」