咲sude

放課後の双龍の倉庫。いつもは賑やかなこの場所も、今は水を打ったように静かだ。

ここ2週間ほど、私の親友はこの場所を訪れていない。


「咲、大丈夫?」

「うん、私は何ともないよ。ありがとう、信乃」


最近ずっと信乃は私に同じことを聞いてくる。

親友が裏切り者と言われている私を心配してくれている。

葵には学校であまり近づかないほうがいいと言われてしまい、何度か会いに行ってみたけれど綺麗に避けられているようだ。


「ねえ信乃」

「なに?」

「信乃には葵がどう見えてた?」


唐突の質問に信乃は目を丸くしたけれど、すぐに考え込むように腕を組んだ。


「そうだな...。クールで冷静、俺たちのことをよく見てたと思う。信頼はしてくれてたと思うし、少なくとも敵意は感じられなかったよ。ただ、」

「ただ?」

「いつも一歩下がっていたような気がする。俺たちとの間に明確な線引きをしているような、そんな感じ」

「そっか...」

「咲は知ってるんだね」

「ん?」

「葵ちゃんが双龍の敵じゃないってこと。学校で噂になってることが全部デマだって」

「...」


本当に信乃は何でもわかっちゃうんだな。”信じてる“じゃなくて”知ってる“って言った。

でも多分それは永和くんや由希くんも同じだと思う。”知ってる”から葵を双龍から遠ざけたんじゃないかな。


「私じゃ、力になってあげられないのかな」