扉の先にいたのは3人。真と由希先輩、そして永和先輩だった。


「遅くなってすみません」

「大丈夫だよ。呼び出してごめんね」


由希先輩はいつものように優しい笑顔で言ってくれるけど、嫌でもわかってしまう。

まとう空気が全く違うってこと。

初めて会った時のような貼り付けた笑みだってこと。

それは他の2人にも共通することで、この場所だけがピリピリと痛いほど張り詰めていた。

その中で永和先輩の視線がゆっくりと私に向けられる。





「葵」




重く開かれる口。




「お前はもう倉庫に来るな」




明確な拒絶。




「今後俺たちに、双龍に関わることを禁じる」




私に与えられるのは”無“だけだった。

なぜ?どうして?いろいろな感情がぐちゃぐちゃになりそうなのをどうにか抑え込む。

今、私に言えることは一つだけ。





「わかりました」

「っ...!」


その瞬間3人ともが息を呑んだ。

あれ?何か変なこと言ったかな。ちゃんと受け入れたよね。もしかして返事しちゃまずかったのかな。

それにどうしてそんな傷ついた顔をしてるんだろう。あなたたちが驚くことでもないでしょう?


「理由を、聞いたりしないの?」

「しませんよ」

「足掻かねえのかよ」

「必要ないでしょう」

「お前にとってこの場所は、簡単に手放せるもんだったのかよ⁉」

「...私がどう思っていようとそれは関係ないはずです。総長が決めたことに従う。それがこの世界のルールなのではありませんか?」


3人の空気に合わせるように私の態度も“最初”に戻す。そうやって言葉を発すれば、今度こそ全員が口をつぐんだ。

もう話は終わり、だよね。

立ち込める感情を振り払うように彼らに背を向けた。