適当な時間に戻ると伝えて、海ではなく岩場の方を目指した。なんとなく海に入る気分ではない。

潮風に当たりながらぼーっと遠くを見つめながら、彼らと出会ってからのことを思い返す。

転校初日に倉庫に連れてこられて、抗争もなくみんなと一緒に時間を過ごす。

守るように家まで送ってもらったり、あまり一人にならないように気を遣ってくれる。

以前まで、私は守る側の立場だった。だから今のこの状況が、今一つ現実味を帯びない。この前龍斗くんに会ってしまってから猶更そういうことを考えるようになってしまった。







どれくらいそうしていたのだろうか。


「葵」

「っ、永和先輩」


少しきつめの声に呼ばれて我に返った。


「どうしたんですか、こんなところで」

「それは俺のセリフだ。なかなか戻ってこねえし、真たちに聞いても見てないって言うし」

「すみません。荷物番、交代しないといけませんね」

「それはいい」

「?じゃあなんで」


こんな端っこまで来たんですか?そう聞く前に


「心配した」


そう言われてしまった。

頭に手を置かれて、もう声が出なかった。

口数が少ない先輩のストレートな言葉。多分先輩にとっては当たり前で、何気ない一言なんだろう。それがひどく、頭の中に響いた。