高校3年にもなると、みんな進路の事でいっぱいいっぱいだけど。

俺は世話になっているバイク屋さんに就職が決まっている。

しかも、今は家庭の事情でこのバイク屋さんの社長宅で居候中。

そのおかげでレースにも集中出来るんだけどね。

「そー!」

社長の柏原 賢司さんは俺の事をそう呼ぶ。

この人がいなければレースなんて出来なかった。

「帰って来て早々悪いけど、ちょっと引き取りに行ってくれないか?」

車の免許は先月取ったばかり。

「はい、行ってきます」

こういう雑用を引き受けるお陰でかなり運転が上手くなった。