そして救急車を呼んだ。
「あぁ、あなた、融点が低いみたいですね。たまにいるんですよ、こういう人。」
駆けつけた救急隊員はそう淡々と言いながら慣れた手つきで僕の右肩に包帯を巻き、溶けた右腕を袋の中に入れた。融点が低い??一体どういうことなんだ。僕の疑問をよそにあっとゆう間に応急処置は終わり救急車は発進した。
生まれて初めて救急車に乗った。救急車は想像よりもゆっくりで、サイレンを鳴らしながら進んで行った。僕は搬送用の固いベットに寝かされ左腕には点滴をつけられた。右腕は寝ている僕の頭上の右上の方に置かれていた。不透明な袋に入れられており中身がどうなってるか全然わからない。袋口からは白い煙が出ている。僕の右腕はどうなってしまうのだろう。心配そうに袋を見つめていると救急隊員は袋を開けて中に入っている腕を見せてくれた。ドライアイスのようなものと一緒に僕の右腕は入れられていた。冷やされているせいなのか赤黒く変色しておりB級ゾンビ映画に出てくる安っちいレプリカの腕のように見えた。グロテスク…という程でもないが溶けだした体の一部というのはあまり気持ちのいいものでは無い。
「もういいです。」
何だか気分が悪い。顔を反らしそれが極力視界に入らないようにした。
「液体窒素で冷やして固るのです。大丈夫、すぐにくっつきますよ。」
近くの総合病院の医者は呑気に言った。
「先生、こういうケースってよくあるって本当ですか?」
僕は救急隊員が言っていたことが信じきれず医者に確認してみた。
「えぇ、本当ですよ。しかし、厄介なのが内蔵も溶けているケースですね。見た目では判断出来ないので気づかぬうちにいつの間にか融解が進んでいたなんてことがあるのですよ。」
聞くんじゃなかった。身体の中でドロドロに液体化してしまった内蔵を想像して思わず身が震える。
「念の為、内蔵の精密検査を行いましょうか?」
医者の提案に僕は速攻で頷いた。