柊路は小さい頃のことはもう
記憶にないと思う。

でもあの子はずっと抱えてる。



死んだ母親の横で

もしかすると
死んでたかも知れない

長く冷たい闇の時間…




助け出したとき、

あの子は手に
石をにぎりしめてた。

なかなかそれを
離しはしなかった。



あの石を握りしめてた
手のように
心のどこかは
固く閉ざされたまま…

それを持ったまま
生きてゆくしかない…