「おはよう」
リビングにあの人がいた
「…おはよう、ございます」
「洗濯、出しておいてもらえれば
私がするのに…」
「…や、あ、大丈夫…
自分でやるから…」
「朝、目玉焼きなんだけど
ご飯がいい?トーストがいい?」
キッチンから、あの人が言った
「時間、ないんで‥いいです…」
オレは乾いたユニホームを
部活のバッグに入れながら言った
「育ち盛りなのに…
じゃあ、コレだけ食べて行って」
言いながらおにぎりを握ってくれた
「ありがとう‥ございます」
「今日ね、夜仕事に行くから
また夕飯用意しておくね
ごめんね‥一緒に食べれなくて」
「別にムリに作らなくても…
昨日のカレー…また食べるから」
「じゃあ、ご飯炊いとくね」
「はい‥
ごちそうさまでした
「うん、いってらっしゃい」
「いってきます」
あの人は
玄関まで見送ってくれた
俺はふりかえらず
玄関のドアが閉まった



