「藍くん…」



後ろから声がした


愛さんの声




「少し戸が開いてたから
覗いたら、藍くんがいた…」


暗闇の中、愛さんの声が響いた



愛さんはオレの隣に座った



オレは目に滲んだ涙を
さり気なく拭った



「藍くん…
私かな…?
藍くんが怒ってる原因」


愛さんにそう言われて
また胸が痛んだ



「…別に…
ごめん、怒ってるわけじゃないけど…
…自分でも、よく、わかんない…」



「…やっぱり、私なんかより
まきちゃんの方がよかったのかな…って
考えてたら、寝れなくなった…」

愛さんが言った



また胸がズキ…ってした

愛さんを困らせてる



「藍くん、いいよ…
私なんかに気使わなくて…
私が藍くんだったら、
絶対、まきちゃんを選ぶと思う
その方が、きっと楽しいと思うな…」

愛さんは、明るく言ったけど
声が震えてた



オレは
フラれた気分になった



「…愛さんは、オレじゃないし
勝手に決めないで…

愛さんは
オレのこと、好きじゃない?」



「好きだよ、藍くんのこと

朝も、いっぱいキスしてくれて、嬉しかった
1日そのこと考えて、仕事もがんばれた

帰ってきて藍くんの様子がおかしかったから
何かあったかな…って
私かな…って

さっきもずっと考えてたけど、
わかんなかった

…美香(みか)さんなら、きっと藍くんのこと、
わかってあげれるんだろうな…
私…ダメなお母さんだね…」


そう言って母さんの写真を見た愛さんが
月あかりで照らされた