「何かって?」
それに対していつもと変わらない様子の紘毅くんは、ゆっくりと私から離れる。
やっぱり気のせいなのだろうか。
だとしたらどうして───
「き、キス…とか、その」
あんなにも近くに紘毅くんがいたの?
すぐキスできてしまいそうなほど至近距離だった。
「…………」
ふたりの間に沈黙が流れる。
紘毅くんは私を見つめて口を閉じていたかと思うと。
「……ふはっ、キス経験すらないヤツがどんな夢見てんだよ」
「…っ、いひゃい」
突然声を出して笑い、私の右頬を軽くつねってきた。
「何、実は欲求不満?」
「ち、違う…!」
慌てて紘毅くんの手を払い、対抗しようとするけれど。
「じゃあどうしてそんなイヤラシイ夢、見たんだろうな?」
「い、いやらしくなんか…じ、じゃあ私も聞くけど、紘毅くんはどうしてあんなにも近くにいたの…!?」
負けじと言い返す。
期待させた紘毅くんが悪い。



