どのくらい経っただろうか。
「詩織?」
気づけば眠気がやってきて、だんだんと意識が遠ざかっていく中、夢か現かわからなくなっていた。
誰かの声がする…ここはどこだろう。
誰が私の名前を呼んでいるのだろう。
「…ったく、風邪ひくぞ」
目を開けてその人物を確かめようとしたいけれど、瞼が重くて開かない。
このふわふわするような感覚に身を委ねていると───
「───なんだよ」
途切れ途切れの声が耳に届いて。
それから何か柔らかなものが唇に触れる感触がした。
何だろう、これ。
まるで私と同じ唇のような柔らかな感触。
それが重なっているようで。
これがキスというものなのだろうか。
経験がないためわからないけれど、もしこれがキスというのなら私は誰としているの?
一体夢の中で誰と───
「……んっ」
少し息がしづらくなったところで、やけに自分の声がはっきり聞こえ。
ようやく完全に意識が戻った。



