「ここまできたらもう家の前まで送らせてよ」
坂野先輩はなかなか引いてくれない。
「本当にすぐそこですよ?」
「大丈夫、気にしないで」
「あの、家を特定してやろうとか思ってないですよね?」
「…そんなに悪い男に見られてるんだ」
だって坂野先輩が悪い。
優しい王子様とは違う一面を見せるのだから。
もし私の知っている彼のままであれば、素直に家まで送ってもらっていたことだろう。
「家を特定したところで何になるの?」
「それは…」
さすがに疑いすぎたかもしれない。
犯罪するような人には見えないし。
けれど一応警戒心はあるぞということだ。
「単に警戒してただけです」
「なら大丈夫だね」
そのため結局家まで送ってもらうことになってしまった。
「マンションだったんだね」
「…そうです。部屋まではついてこないですよね?」
それから数分も経たないうちにマンションの前に着いた。



