「“ヒロキくん”のこと、忘れたいんだよね?」
「…っ」
図星のため何も返せないでいると、坂野先輩は小さな笑みを漏らした。
「大丈夫だよ、誰かに言うほどタチ悪くないから」
「も、もうここで大丈夫です…!」
ぜんぶ見透かされている気がして、逃げるようにその場から立ち去ろうとしたけれど。
彼が私の腕を掴んだ。
「一緒に住んでるんだよね、歳上の“ヒロキくん”と。
意外とアブナイ恋、してるんだね」
「…っ」
先ほど私が咄嗟に“いとこのお兄さん”と言ったからだろうか。
禁断の恋と勘違いしている様子の坂野先輩。
いや、一応禁断ではあるの…だろうか?
それでも私はもう結婚できる歳だし、2年もすれば成人だ。
禁断の恋ではないと思うことにする。
ただ周りの目は気になるため、隠すけれど。
「危ない恋、なんか…してないです」
「嘘、そんなに頬赤らめて」
痛いところを突かれてしまい、何も言えなくなってしまう。



