「ココアが飲みたい、です…」
こんなにも強引に飲み物を買わせて何がいいのだか。
次からはちゃんと手袋をつけてこようと心に決めた。
「ココアね」
私が素直に答えれば、ココアを買ってくれた坂野先輩。
いらない気遣いであるが、文句を言うわけにもいかない。
「あ、あったかい…」
彼から缶のココアを受け取れば、その温かさが手に伝わった。
だんだんと温まっていく手のひら。
「与倉さんの手、相当冷えてたよ?
赤くなってたし」
「…すみません、ありがとうございます」
いらない気遣いと思ってしまったことが少しだけ悔やまれる。
とても優しい気遣いだったのだから。
ただ少しやり方が強引だったけれど。
「うん、どういたしまして」
坂野先輩は満足そうに笑い、彼自身も温かいオニオンのスープを買っていた。



