目の前で“あーん”をされたり、ペタペタくっついて笑い合っているところを見せつけられると、さすがの私も視線のやり場に困ってしまう。
「与倉さん」
「は、はい…!」
そんな私に気づいたのか、隣に座る坂野先輩に小声で話しかけられた。
「抜け出しちゃおうか」
「えっ…」
「顔合わせはできたわけだし、もうふたりに用はないよね」
つまり帰るということだろうか。
「だから早く食べて行こう」
「あっ、は、はい…!」
坂野先輩にそう言われ、運ばれてきたケーキと紅茶を急いで食べる。
それにしてもここのケーキ、すごく美味しい。
紅茶も飲みやすくてケーキと合う。
今度紘毅くんを連れて…なんて、無理に決まっているけれど。
近くのスーパーですら、ふたりで行ったことがないのだ。



