「与倉さん、彼氏いたことないの?」
「な、ないです…」
「それは意外だね」
よくある反応だ。
大体の人に『意外!』や嘘だ〜!』などと言って驚かれる。
「だから隼也くんを紹介したんですよ!」
「……なるほどね。
じゃあ与倉さんは彼氏が欲しいの?」
彼氏が欲しい、と聞かれたら頷けない。
ただ紘毅くんのことを忘れるのが目的なのだ。
「ほら文香ちゃん、与倉さんが困ってるよ?
無理矢理は良くないね」
「だって詩織、せっかく美人なのにもったいなくないですか?」
「確かに綺麗だね、文香ちゃんがそう言いたいのもわかる。けど本人の意思を尊重してあげないと」
すごい。
さすが人気者である坂野先輩は周りをよく見ている。
会ってまもない私のこともしっかり見てくれ、少しの表情の変化などから心を読まれたのだ。
「うう…詩織、迷惑だった…?」
少し落ち込んだ様子の文香。
そんなの首を横に振るしかない。
「そ、そんなことないよ…!バイトしたかったし、恋愛についても前向きに考えたかったから…!」
慌てて否定すれば、文香は安心したようにホッと息をついた。



