「ここ最近、バイトの子がひとり辞めちゃってさ。
ちょうど欲しかったところなんだ」
「そうなんですね!
じゃあ詩織、ちょうど良かったじゃん!」
待って、まだ働くとは言っていないのに。
何やらふたりで話を進めてしまう。
「まかないもあるからオススメだよ。
店長の作る料理は美味しいし」
「でも私、バイトの経験なくて…」
「みんな初めは経験なんてないよ」
うっ…すごくうまいこと言われているような気がする。
これは断れそうにない。
いや、バイトはしたかったのだけれど。
まだ私は坂野先輩のことを何も知らないというのに。
「そんなに人足りてないのか?」
坂野先輩の話を聞いて気になったのか、東山先輩が口を開いた。
「いや、人は足りてないわけじゃないけど…与倉さんなら大丈夫だなって」
「大丈夫って?」
「なんか、店長曰く女性はみんな男目当てで入ってくるって…」
「ああ、男ってか隼也目当てだろ」
「そんなことないよ」
「いや、絶対にわかってて言ったな。
タチ悪いぞ」
何やらふたりが話し始めてしまい、会話においていかれる私。
どうするべきかと悩んでいたら───



