「初めまして、坂野隼也です。
文香ちゃんから話は聞いてるよ」
あ、いい人だとすぐにわかった。
優しい雰囲気を放っている彼に、緊張が解れていく。
「じゃあ詩織は隼也くんの横ね!」
「え、あっ…待っ」
強引に背中を押され、無理矢理坂野先輩の隣に座らされる。
文香って本当に強引だ。
「もー、文香ちゃん。
そんな強引にしたらダメだよ」
「えへへ‥ごめんなさい。
つい張り切っちゃって」
そんな文香を見て坂の先輩も注意してくれたけれど、彼女は嬉しそうである。
「それで詩織はどう?
ここのカフェの雰囲気、いいでしょ?」
「あっ、うん…それはすごく良いと思う」
落ち着いているし、心休まる空間だ。
働きやすそうでもある。
「えっ、じゃあ働いてくれるってことで良いかな?」
「……へ」
文香の質問に対して素直に答えただけだというのに、坂野先輩が隣にで嬉しそうな声をあげた。
恐る恐る見れば、何やらニコニコ笑っている。



