電車に揺られながら時間を見ると10時を過ぎたところだった。
もう家に紘毅くんはいないだろう。
バイトに“行けそう”なら電話をしてと言う坂野先輩の謎の言葉に、一応従えそうだ。
どうして坂野先輩はあんなこと言ったのだろう。
言葉の意図がわからないうちに、マンションが見えてきた。
今日で帰るのは最後かもしれない、紘毅くんの家。
合鍵も帰る際、ポストに入れておこう。
置き手紙は一応いるだろうか。
意外とやることがあるなと思いつつ、とりあえず部屋へと目指す。
部屋の前に着いてドアの鍵を回し、ゆっくりと開けたその時───



