「絶対いいお嫁さんになるよね、いいなぁ“ヒロキくん”は」
「からかわないでください……」
私と紘毅くんは単なる同居人だっただけ。
そう無理矢理にでも思わなければやっていけない。
「もうそろそろ帰らなきゃいけないよね」
「そうですね」
今日のバイトは12時から。
9時が過ぎた今、そろそろ家に帰らないと間に合わない。
「今日はありがとうございました」
「いいんだよ、俺が勝手に呼んだんだし」
こういうところは優しい先輩だ。
本当に手も出されなかったし、気を遣われていた。
「優しいですね、坂野先輩」
「最後くらい良い先輩でいないとね」
「何言ってるんですか、坂野先輩はいつも良い先輩です」
なんだかんだ助けられてばかりだった気がする。
坂野先輩がいて本当に良かった。



