そんな紘毅くんを見て、ドクンと心臓が嫌な音を立てたのは、彼がひとりではなかったから。


紘毅くんと一緒にいた人は、メイクをして、上品な女の人だった。

遠くから見てもわかる、華やかで綺麗な人。



女の人と紘毅くんは親そうに話している。
あ、今笑った。

胸がギュッと締め付けられる。
息がしにくくなる。



クリスマス仕様の駅前広場で、ふたりはまるで恋人のようだった。

オトナのレーベルに包まれたふたりは、今にも手を繋いで歩き出しそうな。


気づけば逃げ出していた。
再度駐車場へと戻っていた。

息が乱れているのは走っているからだろうか。
それとも───


「悪い詩織、遅くなった…!
やっぱり買い物終わってたよな」


どれくらい経っただろうか。
紘毅くんが私の後すぐに帰ってきたわけではなく。

先ほどの綺麗な女の人と話し続けていたのだろう。