朝の通学電車で、紘毅くんと私はいつも同じ時間帯に同じ車両に乗っていた。

たまに隣同士で座ることもあったが、顔を覚えただけであってこの高校生活の間で一度も言葉を交わしたことはなかった。


紘毅くんは単なる“他人”に過ぎなかったのだ。


そんな紘毅くんと言葉を交わすようになったのは、高校2年の春。

大雨の日に、彼は傘もささずに公園でうなだれていた。