「キスすら初めてだよ…私、この間の…」
「あの時からもう男と関係持ってただろ。
帰ってきたら仲良さそうに電話してたし」
「え、覚えて…」
「酔って帰ってくるわけねぇだろ。
家に帰れば詩織がいるんだから」
頭が追いつかない。
直接私の肌に触れている紘毅くんの左手が、中途半端に固まっていた。
「じゃあ、あの時のキスも…」
「ムカついたからキスして電話切った」
「…っ!?」
それは、どうして?
いつもより紘毅くんが近くに感じるのは、この距離のせいだろうか。
「どうせならあん時から手出しとけば良かったな」
「ひゃっ…ま、待って紘毅く…」
紘毅くんの左手の指が、私の背中を一直線になぞった。
くすぐったくて、体をよじる中。
慌てて紘毅くんにストップをかけた。
「待つわけないだろ、そんな嫌がってねぇくせに」
「だ、だって信じられなくて…」
「は?」
自惚れてもいい?
さっきから“坂野先輩”のことに触れてくる紘毅くんに対して。



