「もー…強引な人」
「こうでもしないと俺に見向きもしてくれないから」
「そんなに堕としたいんですか。
“女は全員俺に惚れろ”的な」
「ひどいこと言うね、むしろ逆だよ。
今は与倉さんだけが惚れてくれたらいい」
「……えっ」
爽やかな笑み。
揺れない瞳は私を捉えている。
嘘か本当かわからなくて、思わず俯いた。
「かわいい反応するね」
「か、からかわないでください…!」
「本気だよ、結構。
本当ならこのまま持ち帰りたい」
「なっ…!」
持ち帰りたいって、欲が見え見えではないか。
やっぱり体目的なのかこの人は。
「さ、最低ですね!」
「誤解しないで?
“ヒロキくん”の家に帰したくないだけだよ」
「……へ、どうして紘毅くんの名前が出てくるんですか」
「与倉さんが気づかないうちは平和だよ。
このまま一生気づかなかったらいいのに」
「はい?」
「早く忘れなよ?“ヒロキくん”のこと」
ドキリとした。
紘毅くんのことを好きになる一方で、一ミリも忘れることが叶っていないから。



