そのため最近は断っており、“バイト先の最寄り駅まで”となっていたけれど。
完全に油断していた。
無理矢理でも降ろすべきだったかもしれない。
「まだ一緒にいたいなって、思っただけだから」
視線を外そうともせず、真っ直ぐ見つめられる。
一緒にいたいだなんて、私と?
坂野先輩のことを悪く言ってばかりの私といたいだなんて、もしかしたらMなのか。
「変な人ですね」
「あれ、そのままの気持ちを言葉にしただけなのにな」
「尚更変ですね」
「まあ気にしないことが一番だよ」
相変わらず上機嫌に笑っている。
本当に変な人だ。
結局私の降りる駅に着くと、坂野先輩も一緒に降りた。
「あっ、坂野先輩…!」
するとさりげなく手を握ってくるものだから、慌てて振り払おうとしたけれど。
力が強くでそれが敵わない。



