「坂野先輩と友達関係なんて考えられません」
「大丈夫、そのうち慣れるよ。それに俺はトモダチとして、与倉さんにダメなことはダメだって言って欲しい」
「……っ」
上手いこと言って、私の意志を揺らがせる。
そんな風に言われてしまえば断りづらい。
「ダメ?」
さらには捨てられた子犬のような目をする。
本当にずるい人だ。
「じゃあこの手を離してください…!」
「それはやだよ、俺はトモダチ以上の関係になりたいんだから」
「なっ…」
「でもトモダチになってからの恋愛が普通なんだよね。だから俺も普通の道を辿ることにするよ」
キラキラとした王子様スマイルを浮かべる坂野先輩は、どう見ても変なことを考えているようにしか見えない。
「手を出す気満々じゃないですか!」
「ゆっくりね、与倉さんのペースでいこう」
「話聞いてます!?」
「すぐに手を出したりしないから大丈夫だよ」
まったく大丈夫じゃない。
やっぱり坂野先輩は意地悪だ。



