「とにかく私は…私は、遊ぶことに反対です!」


もし両親が亡くなった直後、絶望のどん底にいた時。

悪い男の人に声をかけられ、関係を持っていたら?
私もその道を通ることになっていたかも知れない。


今の私がいるのは、紘毅くんや祖父母が暖かな優しさで包んでくれたから。

両親が亡くなって幸せが壊れ、不幸になったと思っていたけれど。


今の私も周りに支えられた幸せ者である。


偉そうに坂野先輩の生き方を正そうなんてことはできないけれど。

放っておくのもどうかと思ったから、微妙な返しになってしまった。


「反対、か…与倉さんは人間性を非難するような子じゃないんだね」

「そ、そこまで偉くないんで…でも遊ぶことは良くないと思います…!」


半分言い逃げするかのように、私は先に店の席へと向かう。


後から来た坂野先輩と向かい合って座り、美智子さんがトマトパスタとパン、ジュースまで出してくれた。


「美味しそう…!」


これが賄いだなんて贅沢すぎるけれど。
これから頑張って働こうの意味も込めて、いただくことにした。