「と、とにかく!
坂野先輩は他を当たってください!」
「本当にいいの?
“ヒロキくん”のこと、忘れられないよ?」
「うっ…」
イタイところを突いてくる坂野先輩。
これは忘れるチャンスだと思うけれど、遊び相手になるのは嫌だ。
「本気じゃない方が気楽だよ。
意外と楽しいし」
「……虚しくならないですか?
感情のない関係なんて」
もし、もし紘毅くんが叶わない恋してる私が可哀想だと思い、同情でキスしてくれたとして。
私は嬉しいだろうか?
ううん、きっと苦しくなって。
虚しくて泣くことだろう。
「毎日虚しいよ、俺って中身のないニンゲンだから埋めようとするんだろうね」
ドクンと心臓が大きな音を立てたのはきっと、坂野先輩があまりにも機械的な笑顔に見えたからだろう。
裏のある坂野先輩は、さらに何かを抱えていそうだった。



