君のとなり。

私は慌てて鳴海くんに
スポーツタオルを差し出す。

「スポーツタオル、教室に落ちてた。
これ鳴海くんのだよね?」

違うかったらどうしよう。

おどおどしていると鳴海くんは
さらりと頷いてスポーツタオルを
私の手から受け取った。

「俺のだよ。わざわざここまで
届けに来てくれたんだ、ありがと。」

彼は何故か嬉しそうに笑っている。
その様子を見て、私も嬉しくなった。

「このタオル、もう洗えないや。」

突然そんなことを言う彼に、
私は驚いてそれから
ブンブンと首を横に振る。

「な、何言ってるの鳴海くん。
タオルはちゃんと洗わなきゃ。」

そこまで言ってハッとした。
今のはちょっと言い過ぎだったかも。

心配しながら彼の方に視線をやると
彼はスポーツタオルを首に巻いて
汗を拭いているところだった。

「なんか......幸せ。」

1人で悦に浸っている鳴海くん。
どうやらさっきの言葉は
彼に悪く響かなかったみたいだ。