5分くらい話したところで再びドアが
開く音がして、乃南が教室に入ってきた。

「おはよ。」

声を掛けると、乃南は律儀に答えてくれる。

「おっは~。」

そういうところが優しいんだと私は思う。
私ごときの挨拶なんて、全く聞かずに
スルーされることもしばしばだから。

乃南は私の後ろの席だ。
彼女はカバンを置いてどさりと席につくと、
気だるげな口調でこぼした。

「あぁ、もう帰りたい。」

私はその言葉に小さく笑った。

「いやいや。今さ、来たばっかじゃん。」

乃南は身長がとにかく高い。
170cmくらいあって足が長くて
美人の彼女は私の憧れ。

「学校ってちょっと面倒じゃない~?
だって毎日おんなじことばっかり
繰り返してるじゃん。」

「まぁ、そうかもね。」

そうは言っているけれど、きっと彼女は
このクラスでの学校生活をそれなりに
楽しんでいるんだろうなと思う。

だって彼女は人気者だから。