「それ、クール王子のでしょ?」

クール王子というのは、
鳴海くんのファンが鳴海くんを
呼ぶときのあだ名。

侑紀はゲームにしか興味ないから
ファンではないらしいけど、何故か
クール王子という呼び方を気に入って
使っている。

もっとも、鳴海くんと
実際に話したことはないらしいけど。

「な、なんでそう思うの?」

侑紀......鋭すぎる。
名前まで当てるなんて。

「だって男バスは胸んとこに
名字の刺繍が入ってるからさ。」

「えっ?!」

下を向くと、胸のところに筆記体で
『Narumi.A』と刺繍がしてあった。

侑紀はどこか嬉しそうに呟く。

「希衣、なかなかのやり手だねぇ。
あのクール王子からパーカー
もらうとか難易度高すぎるから。」

そんなことないよ、と言おうとして
私はあることを思い出した。

そうだ、鳴海くんは私以外の
人には超絶冷酷キャラなんだった。