その言葉に心が揺らぐ。
それから遠慮がちに頷いた。

「ん、いいこ。」

彼はパーカーの上から私の頭を
くしゃっと撫でると部活用のバッグを
片手に持って男子バスケ部の朝練へ
ふらっと出掛けていく。

彼のすらっとした後ろ姿に
思わず見惚れてしまったのは
ここだけの秘密だ。

廊下に出てその後ろ姿が角を曲がって
見えなくなるまで眺めていると、
後ろから声をかけられる。

「そんなとこで何してんの?」

この声は、侑紀だ。

「んーん、なんでもない。」

返事をしながら振りかえって
不思議そうな侑紀に笑いかける。

「あそ。てかそのパーカーさ、
誰のやつ?男バスのパーカーじゃん。」

「え、えっと。いや、その。」

鋭い質問にあたふたしていると
侑紀はくすっと笑った。