君のとなり。

「この部分は公式を変形させて
もってこれば大体解けるから
こんな感じで。これで分かった?」

「そういうことなのか!
めちゃめちゃ分かりやすかった。
希衣、わざわざ説明ありがと。」

我ながらなんて馬鹿らしいことを
しているんだろうと思う。

テストは競争。

高い点が取れるかどうか、学年で
何位になれるかが重要なのに友達に
勉強を教えるなんて敵に塩を
送っているも同然だ。

だけど。

教えられないって断ったら、きっと
私たちは友達じゃなくなる。

役立たずはいらないって
簡単に捨てられるかもしれない。

それが怖いから、断れない。
例え嫌なことでも、へらっと笑って
引き受けている自分がいる。

そんな自分が1番嫌いだった。

私の講座が終わった途端に、皆は
世間話を始めるけれど、それには
入れてもらえなくて。

読みかけの推理小説を机の中から
取り出して開いた。

これが私の日常なんだ。

この生活が今以上に良くなること、
なんてこの先ずっとないんだ。