君のとなり。

配られたプリントを解きおえて、
視界の端に映る鳴海くんの
くせっ毛をぼんやりと眺める。

答え合わせしたいけど、隣の席は
違うクラスの女子なんだよね。
確か名前は七条さんだったと思う。

授業終了まであと2分。

早く終われ。

数学はあんまり好きじゃない。
だって答えが1つしかないから。

国語みたいにたくさんの正解が
ある方が、私にとっては嬉しい。

きーんこーんかーんこーん。

「はい、解散。」

先生の言葉を合図に、自分の教室に
戻ってお弁当の用意をする。

椅子から立ち上がると、亜美が
ぱたぱたとこちらに駆け寄ってきた。

「希衣!今日の数学の宿題プリント
全然わかんないから昼休みに教えて!」

お願い、と顔の前で手を合わせている
彼女は文句なしで可愛いと思う。

「あ、私もついでに!」

「私も~。」

夢葉と京華がつぎつぎに言って、
その場に漂うのはなんとなく
断れないよなっていう雰囲気。

「ん、いいよ。」

もちろん私はへらっと笑って承諾。

頭の隅に読みかけの推理小説を
読みたいという願望がちらとよぎった
けど、そんなことはどうでもいい。

クラス内での保身。
それが最重要事項だ。