「一ノ瀬さん、今日で最後だね」
いつもより少し低めのテンションで、美風に誰かが話しかける。気が付けば、美風の目の前には明るい色のくせっ毛をした男子生徒が立っていた。このクラスの人気者である谷口凪斗(たにぐちなぎと)だ。
「……そう、ね……」
一瞬だけ合った目を、美風はすぐに逸らす。胸が締め付けられて、苦しい。美風はずっと凪斗に片想いをしている。しかし、この関係が進展することはない。させてはならないのだ。
「嘘つき」と言って突き放してほしい。この行き過ぎた感情が暴れ回るなら、いっそ世界から消し去ってほしい。そうこれまで何度も美風は思った。
「そろそろ体育館に移動するぞ〜」
担任の先生の声で、教室で話していた生徒たちは廊下へと出て行く。これから列を作り、体育館へ入場するのだ。
「行こっか」
切なげに笑い、凪斗が廊下へと出て行く。美風も立ち上がった。
凪斗と初めて美風が話したのは、中学二年生の春だった。凪斗とは中学校が同じだった。とはいえ、同じクラスになるまで関わりはなかったが……。
いつもより少し低めのテンションで、美風に誰かが話しかける。気が付けば、美風の目の前には明るい色のくせっ毛をした男子生徒が立っていた。このクラスの人気者である谷口凪斗(たにぐちなぎと)だ。
「……そう、ね……」
一瞬だけ合った目を、美風はすぐに逸らす。胸が締め付けられて、苦しい。美風はずっと凪斗に片想いをしている。しかし、この関係が進展することはない。させてはならないのだ。
「嘘つき」と言って突き放してほしい。この行き過ぎた感情が暴れ回るなら、いっそ世界から消し去ってほしい。そうこれまで何度も美風は思った。
「そろそろ体育館に移動するぞ〜」
担任の先生の声で、教室で話していた生徒たちは廊下へと出て行く。これから列を作り、体育館へ入場するのだ。
「行こっか」
切なげに笑い、凪斗が廊下へと出て行く。美風も立ち上がった。
凪斗と初めて美風が話したのは、中学二年生の春だった。凪斗とは中学校が同じだった。とはいえ、同じクラスになるまで関わりはなかったが……。


