「うわ!…あ、あぁ、まあ部長だし」
そのわたしの驚いた様子を見て、面白くなかったのか不機嫌そうに「あっそ」と言った。
「ご、ごめん!別に忘れてたわけじゃなくて…!」
ピタリと悠馬の足が止まった。
するとゆっくりと一歩わたしの方に歩き出した。
前髪の奥にある透明な瞳から、わたしは何かを感じ取り、反動でわたしは思わず一歩下がってしまった。
だけど悠馬の一歩が大きく3歩もしないうちにかなり距離を縮められてしまった。
「あ、あの…悠馬?」
悠馬の読み取れない表情を必死に崩そうと、声をかけるも何も反応がない。
ドクンドクンと心臓が脈打っているのがわかる。
目の前にある悠馬の瞳に吸い込まれそうになるのを必死で自我を保っていた。
すると、すっと悠馬の右手がわたしの方に伸びてきたのを確認すると、わたしは思わずぎゅっと目を瞑った。
「いっ!」
額に小さな衝撃が走り目を開けて確認すると、悪戯が成功したかのような小癪な笑みを浮かべている悠馬が目に入った。
そして同時にわたしは悠馬にデコピンされたのだと気が付いた。

