「あ、すみません。呼び止めてしまって」
別に用はないです。という思いが伝わるように部長に伝えたが、その思いは届かなかった。
「入部考えてんの?」
「あ、はい」
「そっか、よかった」
嬉しそうに微笑まれ、わたしまでつられて笑顔になる。
「…名前は?」
「あ、桜木花音です」
そう言いながら頭を軽く下げた。
「花音!お待ちー」
呑気なめぐの声が聞こえてきた。
めぐはすぐに部長に気づき、わたしと同様に「あ」と小さく声をあげた。
「えっと、彼女も入部希望者です」
「あ、平塚恵です」
「よろしく。じゃあまた」
右手を軽くひらひらを揺らして校舎から出て行った。
「え、もしかして顔馴染み?」
「ううん。入りづらくて、弓道部の前をウロウロしてたら部長から声をかけてもらったの」
「あぁ、なるほどね」

