送ると言っても、ここから家の前は見えている。
いつもなら「なにこれくらい必要ないよ」とか言えるのに、今日は何も言えない。
わたしは静かに車から降りた。
降りて悠馬を横目で見るも、目が合うことはなかった。
そんな悠馬の様子を見て、胸が苦しいくらいに痛くなった。
わたしが車を降りると、先導するようにわたしの3歩前を歩いた。
見慣れている背中のはずなのに、今日はやけにその背中が寂しく感じる。
「あの…悠馬?…ここで大丈夫だから」
もう家まで数メートルというところで、やっとの思いで声をかけた。
「…あぁ」
小さな声で呟くと、目も合わさないままわたしを通り過ぎた。
このままで良いのだろうか。
そんな不安がわたしを襲った。
誤解されたまま、悠馬とここで別れてしまっても良いのだろうか。
「ゆ、悠馬!」
気づいた頃には、悠馬を引き止めていた。
悠馬は、振り向きはしなかったが、わたしの呼びかけに足を止めた。

