悠馬に怒られたから?

それとも悠馬に先輩とのキスしそうになったのを見られたから?


…わからない。

自分のことなのに、自分でもよくわからない。



「…ごめん」

わたしはやっとの思いで声を出して悠馬に謝った。


わたしが悪いことをしたのか、それもわからない。

2週間前にも喧嘩になったが、ここまで悠馬がわたしに対してこんなにも怒ることなんて、今まで一度もなかった。



わたしが謝ると、悠馬は一瞬ハッとしたような顔をして、ゆっくりとわたしから離れた。


「悪かったな。無理やり連れ込んで」


悠馬は力尽きたような弱々しい声でわたしに謝った。


その悠馬の様子にわたしはなんて声をかければいいのか分からなかった。


だけど誤解を解きたい、という気持ちは強くあった。


でもそれを今言っても逆効果のような気がして、わたしは車から動くことができなかった。


「…送ってく」

目も合わせずに悠馬がそう言った。