どうやら、少し離れたところに車を止めていたようで、わたしは車の中に無理やり押し込められた。
「え、な、なに?」
車から降りようとするも、阻まれて降りることができない。
悠馬は車には乗らず、わたしが降りないようにか、左手でドアを抑え込んでいた。
すると、右手でシートバックポケットからペットボトルを掴み、ハンカチをポケットから取り出すと、少し車から離れて水をハンカチに濡らした。
「ちょ、なにしてるの?」
何がしたいのかわからず、わたしはただボー然としていた。
するとそのハンカチを大して絞りもしないで、わたしに近づけてきた。
「ちょっとじっとしてろ」
低く鋭い声で命令され、わたしは思わず体が硬直する。
こんな冷たい声、聞いたのは久しぶりだ。
いつも冷静な悠馬の顔が怒りに歪んでいた。
悠馬はその濡らしたタオルをわたしの口元に持ってきた。
「な、なに?」
読めない悠馬の行動に恐怖を覚える。
ーーこんな感覚は初めてだ。
少し怯えながらも、悠馬に行動の意図を尋ねた。

